A型事業所について調べていると、「A型事業所 やめとけ」「A型事業所 おかしい」といった単語が表示されて不安に思ったことがある方もいるのではないでしょうか?
利用を検討する中でこのような情報に触れると躊躇してしまいますよね。
結論から言うと、悪いA型事業所はごく一部で、選び方さえ間違わなければ良いサポートを受けながら働くことができます。
この記事では一部のA型事業所が「やめとけ」「おかしい」と言われてしまう3つの理由と、失敗しない選び方を解説します。
そもそもA型事業所とは?
A型事業所の正式名称は「就労継続支援A型事業所」と言います。障がい者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」の一つで、障害や難病をお持ちで一般企業での就労が難しい方々が給料をもらいながら働くことができます。
雇用契約を結んで給料をもらいながら働ける
A型事業所の最大の特徴は、利用者と事業所が「雇用契約」を結ぶ点です。法的な労働者として扱われるため、労働基準法が適用され、各都道府県の最低賃金以上の給料が保証されます。これが、作業工賃のみを受け取るB型事業所との決定的な違いです。
雇用契約があることで、条件を満たせば雇用保険や社会保険への加入も可能です。安定した収入を得ながら、実際の業務を通じてビジネスマナーや実務スキルを磨くことができます。
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職員のサポートを受けながら就業経験を積める
A型事業所には、職業指導員や生活支援員といった専門のスタッフが常駐しています。仕事の進め方はもちろん、体調管理や職場での人間関係など、働く上で生じる不安をすぐに相談できる環境が整っているのも大きなメリットです。
障害や病気の特性を理解した上で業務が割り振られるため、無理なく自分のペースで働くことができます。もし体調が優れない場合でも、柔軟な対応が受けられる安心感があります。
製造業・サービス業・IT関連など、仕事内容は多種多様
以前はA型事業所の仕事内容といえば、箱の組み立てなどの軽作業が中心でしたが、近年では非常に多様化しています。製造業では部品加工や検品・梱包といったコツコツ取り組める作業が多く、サービス業ではカフェやレストランでの接客、調理補助、ホテルの清掃などがあります。
さらに最近増えているのがIT・事務関連の業務です。データ入力などの基礎的なものから、Webデザイン、動画編集、プログラミングといった専門スキルを磨ける事業所も登場しています。
A型事業所が「やめとけ」「おかしい」と言われる理由は?
助成金を目当てとした悪徳業者の存在
かつて、障害のある方の自立を支援するための公費(給付金)を、そのまま利用者の賃金に充てるという不健全な運営を行う事業者の存在が一部で問題視されていました。
本来、賃金はパンの製造やデータ入力といった「事業を通じて得た収益」から支払われるべきものですが、悪徳業者は事業努力をせず、制度の抜け穴を利用していたのです。その歪みが限界に達した象徴的な出来事が、2017年に岡山県などで起きた大量解雇事件でした。経営に行き詰まった事業所が突然閉鎖し、多くの障害者が予告なく働く場を失うという痛ましい事態は、社会に大きな衝撃を与えました。
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しかし、この事件をきっかけに国は動き、制度を抜本的に見直しました。「賃金は事業収益から支払うこと」という原則が徹底され、それが守れない事業所には経営改善計画の提出を義務付けるなど、非常に厳しいチェックが入るようになったのです。これにより、補助金頼みの安易な運営をしていた悪質業者は事実上事業を続けられなくなり、淘汰が進みました。
現在運営されている多くの事業所は、こうした厳しい基準をクリアし、本気で利用者のスキルアップと事業の黒字化に取り組んでいるところです。過去の教訓を経て、制度はより堅実で、利用者の方々を守る仕組みへと進化しています。
事業所及び関わる人とのミスマッチ
A型事業所選びにおいて、「入社したけれど続かなかった」というケースの多くは、能力不足ではなく「ミスマッチ」が原因です。ここには主に3つの要因があります。
1つ目は「業務内容」のズレです。「パソコンスキルを活かしたいのに軽作業しかない」「手先が不器用なのに細かい組立作業を求められる」といった適性の不一致は、本人のやる気および自信の喪失に繋がります。逆に、能力に対して仕事が簡単すぎると、成長を感じられず意欲を失ってしまいます。
2つ目は「支援員」との相性です。障害特性への理解度や接し方は、支援員によって異なります。「厳しい指導で伸びるタイプ」もいれば、「共感的な傾聴を求めるタイプ」もいます。ここが噛み合わないと、困った時に相談しづらく、孤立感を深めてしまう原因になります。また、事業所には他の障害者の方もいますので、同僚関係や時には恋愛関係で上手くいかないケースもあります。
3つ目は「施設全体の雰囲気」です。静かに黙々と作業したいのに常に会話が飛び交う環境だったり、逆にアットホームさを求めているのに規律が厳格すぎたりと、「肌に合わない」居心地の悪さは大きなストレスになります。
給料が低い
A型事業所の給料が、一般就労に比べて低いのは事実です。厚生労働省のデータなどを見ても、月額の平均賃金はおよそ8万円前後にとどまっており、これだけで単独で生計を立てるのは容易ではありません。
誤解してはいけないのが、給料が低い理由は単に安く使われているのではないということです。「体調を優先して短時間で働きながら、支援を受け取る対価としてのトレードオフ」というのが正しい理解となります。
その最大の理由は、「労働時間の短さ」にあります。 一般企業の正社員が「1日8時間・週5日(月160時間以上)」働くのが標準であるのに対し、A型事業所は利用者の体力や精神面への配慮から、「1日4〜5時間・週5日(月80〜100時間程度)」という短時間勤務が一般的です。最低賃金が保証されていたとしても、働く時間が半分であれば、月収も半分になってしまうのは避けられない構造的な要因です。
加えて、以下の要因も重なっています。 経営的に余裕があるA型事業所は少ないため、給料が地域別最低賃金と同額に設定されているケースが多いです。一般企業のような大幅な昇給や高額なボーナスは、仕組み上発生しにくいのが現状です。 また、A型事業所の業務は、障害のある方が無理なく取り組める軽作業が中心になりがちです。これらは比較的単価が安く、事業として大きな利益を上げにくい構造にあります。「賃金は事業収益から支払う」という原則がある以上、爆発的な利益が出にくい事業からは高い賃金を払う原資も生まれないのです。
失敗しないA型事業所の選び方
インターネットにはたくさんの情報が落ちていますので、A型事業所に対してネガティブなイメージや不安を持つのは、ある意味で当然のことです。自分の生活がかかっているのですから、慎重になるのは決して悪いことではありません。
しかし、いくらネットで情報を集めても、その事業所が「あなたにとって働きやすい場所かどうか」という答えは画面の中にはありません。
これは障害福祉や障害就労に限った話ではなく、健常者の一般就労や転職活動でも全く同じことが言えます。どんなに待遇が良い求人でも、実際に会社に入ってみたら「人間関係が合わなかった」「職場の空気が耐えられなかった」ということは往々にしてあるものです。求人票や口コミサイトだけでは、職場のリアルな空気感までは見えません。
だからこそ、失敗しないために最も重要なのは、難しく考え込まず、まずは「見学」や「実習・体験」に行ってみることです。
- 自分の障害特性に合っているか?/合わせてくれるか?
- スタッフの挨拶や表情は明るいか?
- 通っている利用者さんは落ち着いて作業できているか?
- 困った時に相談しやすそうな雰囲気か?
こういった「自分に合うかどうかの直感」は、現地に行ってみないと絶対に分かりません。
「見学に行ったら断れなくなるのでは?」と心配する必要はありません。あくまで自分に合う場所を探すためのステップです。まずは気軽に、近隣にどのような事業所があるのかを探すことから始めてみましょう。
あなたらしく働ける場所は、意外と近くにあるかもしれません。まずは以下から、気になる事業所をチェックしてみてください。

