A型事業所は「助成金目当て」ってホント?制度のカラクリ・過去のニュースを解説

A型事業所は「助成金目当て」ってホント?制度のカラクリ・過去のニュースを解説

就労継続支援A型事業所の利用を検討している中で、「助成金目当て」といった言葉を目にして不安に感じることはないでしょうか?

助成金目的の事業所に入ってしまうと、ちゃんとした仕事やサポートが受けられないのではないか

本当は自分らしく働ける場所を見つけたいのに…

こうした不安を感じるのは当然のことです。

特にA型事業所は利用者と雇用契約を結ぶため、働く場所としての質は非常に重要です。

結論から言うと、ルール改正によって現在のA型事業所からは助成金目当ての悪徳業者は追い出されたので、安心して利用を検討して問題ありません。

この記事を最後まで読むことで、助成金目当てのA型事業所を過度に恐れることなく、あなたに本当に合った事業所を選ぶ自信が持てるようになるでしょう。

目次

就労継続支援A型事業所とは

就労継続支援A型事業所とは、全国におよそ4,000か所ある障害者総合支援法に基づく就労支援サービスの一つです。

一般には「A型事業所」「A型作業所」と呼ばれることが多いです。

一般企業での就労が困難な障害や難病のある方に対し、支援員のサポートのもと働く場所を提供して知識やスキルの向上のために必要な訓練を行います。

A型事業所の最大の特徴は、事業所と利用者が「雇用契約」を結ぶ点にあります。

それにより、都道府県ごとに定められた最低賃金以上の給料が保証されます。

A型事業所がもらえる助成金・給付金の種類

まず、A型事業所の運営を支えているのは、「訓練等給付費」と「特定求職者雇用開発助成金」の2つです。

訓練等給付費

A型事業所にとって最も重要で事業所運営の根幹となる収入源が訓練等給付費という給付金です。

訓練等給付費とは、障害者総合支援法に基づいて支給される「自立支援給付」の一つです。

訓練等給付費とは
目的A型事業所が利用者に対して訓練や支援を提供したことへの報酬として支払われる
財源国や自治体の公費(税金)
支給額「定員区分」「人員配置区分」「評価点(スコア)」という3つの基準によって基本報酬が決定されるため、事業所によって異なる
支給期間利用者がいる限り、適切な支援を提供する事業所に継続的に支給されます

特定求職者雇用開発助成金

訓練等給付費のほかに大きな収入源が特定求職者雇用開発助成金です。

特開金と呼ばれるこの助成金は、障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。

A型事業所に限って支給されるものではなく、特定の条件を満たしていれば一般企業にも支給される雇用促進のための助成金です。

特定求職者雇用開発助成金とは
目的就職が困難な方(障がい者など)を継続して雇用する事業主の支援
支給条件障がいのある方をハローワークなどの紹介で雇用し、一定期間雇用を継続すること
財源事業主が負担する雇用保険料
支給額「対象者の類型と障害の程度」「企業規模」「労働時間」によって計算されるため事業所によって異なる
支給期間障害の種類によって異なり、 2~3年間支給される

3年でクビになる?悪しきA型事業所問題とは

過去に「助成金目当てのA型事業所」という悪評が広まった背景には、一部の悪徳業者が制度の隙間を突いて不適切な運営をしていたことがあります。

いわゆる「悪しきA型事業所問題」と呼ばれるもので、これを受けて現在はより公正な制度に代わりました。

悪徳業者が仕掛けたカラクリを解説

事業収入を増やす努力をせず、訓練等給付費や特定求職者雇用開発助成金の獲得のみを目的とした一部の事業所が問題となっていました。

訓練等給付費は事業所に利用者がいることで発生します。

この構造を悪用して障害者をただ所属させているだけで訓練等給付費を受け取る事業所が多発しました。

利用者に十分な訓練や価値ある仕事を提供せず、最低限の作業やほとんど意味のない作業(簡単なシール貼りや暇つぶしなど)だけを行わせるのです。

また、特定求職者雇用開発助成金は最大3年で支給が終了します。

そこで、数年ごとに事業所を閉鎖して新たな事業所をオープンし、利用者をそちらで雇い直すということを繰り返すことで、半永久的に助成金をもらいつづけるケースもありました。

このように助成金・給付金を多額に得ることで、利用者へ最低賃金に近い給与を払ったとしても事業所側には多くの利益が残るため、制度を悪用する業者が後を絶たなかったのが「悪しきA型事業所問題」なのです。

①訓練等給付費:障害者1人につき、1日通所すると約5,000円が事業所に支給される
→利用者20人を雇用、年間200日開所すると3年間で6000万円の収入
②特定求職者雇用開発助成金:障害者1人雇用すると、3年間で最大240万円が支給される
→障害者20人を雇用、3年間で4800万円の収入
③助成金だけで3年間で1億円以上の収入になる
④利用者・職員への給料支払いなど最低限の経費を支払う
→それでも数千万円もの利益が残る

※3年経つと特開金がもらえなくなる
→利用者を解雇して事業所を閉鎖、新しいA型事業所を立ち上げて①~④を繰り返す

このカラクリにより、「単なる給付金獲得のための頭数にされてしまうではないか」という不安が利用者に広がってしまったのです。

結果として、「障害者への就労機会・生産活動の提供や、就労に必要な知識・能力の向上」というA型事業所の本来の目的を果たしていない状態になってしまいました。

ルール改正により現在は撲滅

このような悪質な運営事例が社会問題化した結果、厚生労働省は2017年にA型事業所の運営基準を大幅に厳格化しました。

具体的には、訓練等給付費の中から利用者の給料を支払うことを禁止したのです。

つまり、事業活動による収入から利益を上げなければいけなくなり、生産性の高い仕事や事業を行うことを義務付けられました。

このルールを満たせない事業所は、行政から改善指導を受けたり、指定を取り消されたりする対象となります。

ですので、障害者を所属するだけ所属させて助成金や給付金をノーリスクでせしめるというカラクリは現在では通用しなくなっています。

現在のA型事業所は事業の収益性を上げるために、外部から仕事を積極的に受注したり、障害者一人ひとりの仕事の生産性やスキルを上げるために個別支援計画を作成するといった工夫を凝らしています。

ニュースになった事例

2017年に厚生労働省が地方自治体に、給付金を利用者の給料に充てないようA型事業所への指導を強化するよう通達したのをきっかけに、助成金目当てのA型事業所の閉鎖が多発しました。

あじさいの輪(岡山県倉敷市)

2017年に事業所を閉鎖、約220人の利用者を解雇。

※出典:毎日新聞「補助金目当て/触れ合いの場…岡山で考える会

パドマ(愛知県名古屋市)

2017年、経営悪化で事業所閉鎖。

社長自ら「給付金で皆さんの給料のほとんどを払っていた」と認めています。

※出典:中日新聞「【暮らし】<放り出された障害者 大量解雇の現場から>(2) 給付金頼みの収支構造

フィル(岡山県倉敷市)

あじさいの輪で解雇された利用者20人を受け入れ先となっていましたが、2018年に負債総額6億円を抱えて経営破綻。約170人の利用者が解雇されました。

※出典:瀬戸内海放送「就労継続支援A型事業所3カ所が閉鎖へ 岡山・倉敷市の会社が運営

利用者が解雇されるという痛みを伴う改革でしたが、これをきっかけに助成金目当てのA型事業所がなくなることとなりました。

まとめ

就労継続支援A型事業所の「助成金目当て」という不安は、過去のルールを悪用した悪徳業者により広がったものです。

しかし、現在の制度下で利用者の働く機会を軽視し助成金だけを目当てにした運営は継続不可能となっているのでご安心ください。

訓練等給付費の中から利用者の給料を支払うことを禁止するという制度改革により、「障害者への就労機会・生産活動の提供や、就労に必要な知識・能力の向上」というA型事業所の本来の目的を果たす方向へと変化したのです。

障害者の求人・転職・就職は「LITALICO仕事ナビ」

障害者のための転職・就職支援サービス「マイナビパートナーズ紹介」

障害者の転職支援数No.1「dodaチャレンジ」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ココベース編集部のアバター ココベース編集部 「障がい者雇用サポーター」「精神・発達障害者しごとサポーター」

就労支援専門メディア「ココベース」の編集部です。利用者と事業所の間に立つ存在として、有益な情報を発信していきます。
筆者は、障がい者雇用支援センター認定の「障がい者雇用サポーター」です。厚生労働省の講座を受講した「精神・発達障害者しごとサポーター」でもあります。

目次